糖尿病シリーズ

目次

  1. 糖尿病について
  2. 糖尿病の治療 (糖尿病の話
  3. 糖尿病網膜症について
  4. 糖尿病と泌尿器科疾患
  5. 糖尿病と心血管疾患
  6. 糖尿病の脳血管障害
  7. 糖尿病性神経障害について

1. 糖尿病について
2009.8.15 広報よねざわ掲載
さの医院 佐野隆一

 糖尿病とはインスリン不足により血糖値(血液中のブドウ糖濃度)の高い状態が持続する病気です。 原因は遺伝因子、加齢と生活習慣因子(食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、ストレスなど)です。 2007年の国民健康栄養調査では糖尿病を疑う人890万人、可能性を否定できない人1320万人と推計され、糖尿病・糖尿病予備軍ともに年々増加しております。糖尿病の増加は世界的にも深刻で2006年に国際連合は11月14日を「世界糖尿病デー」に定めました。

 糖尿病の初期には症状がほとんどないので、糖尿病神経障害、網膜症、腎症や動脈硬化症(心蔵病、脳卒中)などの合併症で初めて気付かれることもしばしばです。 我が国では糖尿病性腎症による透析導入患者は1年間に1万6千人と原因の40%を占め、置賜地方でも透析患者の増加が問題になっています。 糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本です。 糖尿病療養指導士とのチーム医療により、発症早期からグリコヘモグロビン(HbA1c)を6.5%未満にコントロールすることが合併症予防に効果的とされています。

2. 糖尿病の治療
2009.9.15.広報よねざわ掲載
米沢市立病院 八幡芳和 (糖尿病の話

 前回のお話のように、日本人に多くみられる糖尿病は膵臓のB細胞から分泌されるインスリンというホルモンの不足が基本になり、更年期障害の治療と同じくホルモン補充療法です。

 最近の遺伝子組換工学の進歩で、超速効型から持効型(超持続型)と今までになくインスリン注射製剤の種類が増えて患者さんの状態に応じて医師が選択します。 また膵B細胞のホルモン分泌刺激剤である飲み薬は直接代用品でないため、重症例や妊産婦には使用できない場合もあります。 また肥満している人が多いことから、注射したインスリン製剤を効きやすくする薬、小腸からの糖分の吸収を遅くする薬など、多数の補助薬もあり、治療法のアレンジに工夫が必要です。

 いずれにせよ、膵B細胞の働きを抑制しないように食べ過ぎないこと、しっかりした運動や、肥満にならないことが肝要ですが、血糖のコントロール状況と合わせ、できるだけ自分にとって長続きする治療法を主治医の先生にご相談ください。

3. 糖尿病網膜症について
2009.11.15 広報よねざわ掲載
米沢市立病院 眼科 宮美智子

 糖尿病網膜症は、糖尿病患者に見られる眼の合併症の一つです。 眼合併症としては、白内障、網膜症、黄斑症、屈折調節障害、角膜症、視神経障害、緑内障、ぶどう膜炎があります。 網膜症は、網膜血管が高血糖のさらされ特に毛細血管の内皮細胞が障害され、血管の透過性亢進、毛細血管瘤が形成され、網膜浮腫、網膜内出血、硬性白斑がみられるようになります。 網膜症は、罹病期間の延長とともに増加し、罹病期間5年で10%、10年で30%、15年で50%、20年で70%以上の患者に見られます。 約2%に失明が見られます。

 網膜症の予防には、血糖コントロールが大切です。 長期間糖尿病であれば、網膜症を発症する危険が高くなります。 治療は、網膜光凝固術や硝子体手術が必要となります。 治療によって失明を免れることができます。 網膜症の初期には自覚症状がありません。 定期的に眼科を受診しましょう。

4. 糖尿病と泌尿器科疾患
2009.12.15 広報よねざわ掲載
米沢市立病院 泌尿器科 高岩正至

 腎機能・男性機能温存は早期対策が必要。 糖尿病による慢性腎臓病が増加しています。 慢性腎臓病はステージ1から5までに分類されています。 健診にて尿蛋白がプラスマイナス、つまり微量に検出されるステージ1の時期であれば、運動療法と摂取カロリーの制限で腎機能は正常に回復します。 尿蛋白が明らかに陽性であるステージ2になると腎機能の完全回復は期待できませんが、運動療法・カロリー制限と血圧コントロール(塩分制限や降圧剤)によって慢性腎臓病の進行を遅らせることは可能です。

 健診結果に少しでも異常があったら早めに主治医に相談し、糖尿病の診断がつく前段階で生活習慣を健康志向に変える意識改革が重要です。 男性機能低下が糖尿病性末梢神経麻痺の初発症状になることもまれではありません。 クロム・セレンマグネシウム・亜鉛などの微量元素を含む安全な食品、無農薬・無添加の天然食材そして安全な水は糖尿病をはじめ癌の予防にも役立ちます。

5. 糖尿病と心血管疾患
2010.1.15 広報よねざわ掲載
米沢市立病院 心血管外科 三澤幸辰

 現在、糖尿病は血管病とも言われています。 糖尿病患者さんは健常人より約20年早く動脈硬化が進行すると言われ、心血管疾患の危険因子であることが明らかとなっています。 糖尿病合併症による心血管疾患としては虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や下肢の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)が有名です。 虚血性疾患は突然発症することも多く、生命の危険にさらされることもあります。 また、下腿壊疽へ進展した場合、下腿切断を余儀なくされる可能性もあります。

 このように怖い心血管疾患の発症・進展を予防するためには、糖尿病発症早期からの厳格な血糖コントロールが重要です。 血糖コントロールが一定期間不良であると、以後の血糖コントロールにかかわらず血管合併症の発症リスクが高いまま維持されることが示されています(高血糖の記憶)。 健康診断等で糖尿病が疑われる方は、自覚症状がなくとも早期からの医療機関を受診しましょう。早期からの積極的治療が将来的な心血管保護につながります。

6. 糖尿病の脳血管障害
2010.2.15 広報よねざわ掲載
三友堂病院 脳神経外科 新宮 正

 私たちの脳は、体重の2%たらずの重さしかありませんが、酸素は20%、ブドウ糖は25%を消費する大食漢の臓器です。 血管はこれを淀みなく脳に供給しており、血液が脳に行かなくなると10秒で意識がなくなり3分後には脳細胞が死んでしまいます。 脳梗塞は、脳血管の一部がつまって起こり、起こった場所によって手足の麻痺や言語の障害、視野の欠損などさまざまな症状がでてきます。 脳に対する血液の流れが悪くなると認知症の原因にもなります。 脳は一度壊れると再生しない特殊な臓器ですので予防が大切です。 「ヒトは血管とともに老いる」と言われています。

 糖尿病は高血圧と並んで、血管の老化を促進するとても危険な病気です。 糖尿病の予防と治療につとめて血管の老化を防いで若々しい健康を維持して人生を楽しんでください。

7. 糖尿病性神経障害について
2010.3.15 広報よねざわ掲載
独立行政法人国立病院機構米沢病院 院長 飛田宗重

 糖尿病性神経障害は、眼の網膜症・腎臓の腎症とともに糖尿病の三大合併症と言われてきました。 症状は多彩で、両手のしびれや痛み、足先の異常な冷え、足の底が皮をかぶった感じ、砂利の上を歩いているような異常感覚、顔面神経麻痺や眼を動かす動眼神経麻痺といった脳神経障害、めまい、たちくらみ、胃腸障害、便通障害排尿障害、インポテンツなどの自律神経障害、さらに致命的な不整脈や足の壊疽の原因にもなります。

 自覚症状が出る前にアキレス腱反射や知覚検査でわかりますので定期的に診察を受けましょう。 初期には糖尿病の治療や薬物療法で良くなりますが、治療が遅れると回復しません。 糖尿病は定期健診を受けること、早期発見、早期治療が最も重要です。 健診を受けないと謙信公も悲しみますぞ。