『石巻スタート、8月13日(火)』
朝6時10分の電車で出発。
石巻駅到着。9時半ごろ。
駅前のトイレで着替え。
ちゃんと日焼け止めも塗る。
なにせ暑い。快晴でもある。
服装はTシャツに長いズボン。
短パンにすれば良かったかなと、ちょっと後悔。
この日の目的地は女川(おながわ)
国道398号を使うのだが、そこへ行く道がわからない。
地図を何度も見て、迷いながらようやく国道に出る。
国道なのに、途中から滅茶苦茶狭い道。
川沿いの道なんだけど、車がすれ違うのがやっと。
そして沿道、やたらと石屋、石材店がある。
どうも全部で20軒くらいか。
個人商店みたいのから工場みたいになっているのまで、大小さまざま。
中には店頭に、石でできた小さなゴジラを飾っている店もあって笑えた。
「こりゃ、石の町だな」と考える。
ん?
「石の町? 石の町・・・あれ、石巻って地名は石の町から来たのかな」と考える。
合ってる?
少なくとも石が名産のため、市の名前に石が付いたのは間違いないだろうな。
初めて知ったよ。
徒歩旅行も、ちょっと勉強になる。
ここの川、すごく広いんだけど、やたらとカヌーがいる。
教室みたいのもやってるみたい。
『陸前稲井駅』
途中、陸前稲井という駅。
JRの小さな駅なんだけど、駅舎がものすごく小さくて、見た目が昔のベージュに赤の電話ボックスみたいだ。
あまりの小ささと、奇妙なデザインに見入ってしまう。
駅舎を写真に撮っているアマチュアカメラマンらしき人もいた。
有名な駅舎なのか?
『なぜかトラックの運転手に・・・』
途中の道、車があんまり通らないし、歩道もあって歩きやすいんだけど、なにせ田んぼの真ん中を通っているので、ちと退屈。
それに暑い。汗だくである。
つばのある帽子を被って、首にタオルを巻き、下を向いて黙々と歩いていたら、クラクションが鳴った。
「は?」と思って顔を上げると、2トンくらいのトラックの黒いサングラスの運転手がこちらを見て手を挙げて挨拶していった。
一瞬、なんだかわからなかった。
こんな所に知り合いがいるわけもないし。
かといって、なにか注意を促すためのクラクションでもなさそう。
しばらく考えて、「そうか、なんだか知らんが励ましてくれたのか」と思い至った。
考えてみると、確かにこちらの格好は普通には見えないかも。
40代のおっさんが、緑の帽子被って、迷彩柄のデイパック背負って、首にタオル巻いて普段人が歩くわけもない所を歩いている。
徒歩旅行者以外、考えられんものな。
20代半ばくらいの、サングラスで人相の悪い運転手だったが、わたしを励ましてくれたとは。
こっちはただ好き勝手に、生産性の無いことをしているだけなのにと思って、なんだか悪いような気がしてきた。
でも、こんなコミュニケーションもいいかな、なんてことも考えた。
正直言って、意外なほどうれしいものなんだよなあ。
見ず知らずの人とのコミュニケーション。
こんなこともあるんだなあ、としみじみ思った。
『防波堤で昼食』
防波堤に坐って、コンビニおにぎり。
と言うと、ちとおしゃれなようだが、ここはまるっきりの港町。
観光地ではない。
したがって、漁船がつないであって、魚のにおいがすごくて、あっちこっちにゴミが漂着していて、ホントのことを言えば食事したくなる環境ではない。
しかし、もう暑さのせいか疲れきって、ダウンという感じ。
なにせ足がもつれて、防波堤をまたぐ時、腰をひねってしまったくらい。
腰が痛い。
「徒歩旅行、初の負傷か」と思ったよ。
一瞬、もう今日はここでリタイアか、とも考えたけど、思い直して出発する。
歩道も無いので、歩きにくい。
腰が痛いので、そろそろとゆっくりと歩く。
けが人が、やっと歩いているように見えただろうと思う。
『赤ん坊を連れた若い女性に・・・』
浦宿という小さな駅まで来て、歩道で地図を見てると、いきなり話しかけられた。
見ると、赤ちゃんを抱いた女の人。
20代前半?
目を上げたら、いきなり目の前に女の人がいたので、びっくり。
「どこまで行くんですか」なんて言っている。
いや、実を言うと結構美人というか、かわいい感じだったもので、ドギマギしてしまって、「ええと、あの女川」なんて答える。
「女川? あのここも女川ですよ」
「あ、いや、女川駅まで」
「ああ、それなら2キロくらいですかね」
なんて会話を交わす。
彼女はもっとなにか話したかったらしいんだけど、こっちはもう歩きで疲れきっていて、精神的に知らない人と話をするのがつらかった。
残念だった。
この年になると、女の人に話しかけられる機会なんて無いものね。
「アクションを起こすと、なんらかのリアクションがあるもんだな」なんて考える。
あと、こういう時、自分のウエブサイトがあって、URLが書いてある名刺なんか渡せるといいのになと考える。
それが、このサイト作りにつながっているのであった。
『女川』
そんなわけで、女川。
地図で見るとわかるけど、ここは陸の端っこにある。
港町、兼海水浴場の町のようだ。
途中、「原子力がどうのこうの」という看板を見かける。
そういえば、女川原子力発電所って聞いたことあるなと考える。
学校の夏休み中だから、すごい数の観光客。
そして車の数。
「こんなの計算に入れてなかった。こりゃまずいな」と考える。
だって、ホテル取れないじゃないの。
その心配は当たっていたというか、外れていたというか・・・
この町にはビジネスホテルが無いのである。
民宿はたくさんあるみたいなんだけど。
町唯一のビジネスホテルに行ってみたら、営業してないでやんの。
受付の所にはダンボールが積み上げてあって、何度呼びかけても誰も出てこない。
どういうこと?
海水浴客でいっぱいのはずの民宿に行く気にもなれず、電車で石巻に戻る。
きょうはここまで。
『石巻のホテル』
ああ、なんか変なホテルなんだよ。
あのさ、ホテルっていうか、下宿。
実際、元は下宿だったのかも。
部屋に入ったら、畳の部屋にベッドが置いてある。
部屋の中には、トイレも風呂も冷蔵庫も何にも無い。
風呂は家庭用の風呂みたいのが一つ。
で、この風呂、ホテルの管理人さんも使っているみたい。
管理人用の髭剃りとか歯ブラシとか、整髪料なんかが、ごく普通の家のように置いてある。
要するに、知り合いの家に泊まって、そこの風呂に入れもらう感じ。
とにかく、ホテルじゃねえよ。部屋も4室くらいしか無いみたいだし。
ホテルって、とにかく当たり外れがあるけど、ここは大はずれ。
まあ、仕方が無い。たまにはこういうこともある。
『8月14日、ルート変更』
そのへんてこなホテルで、地図を見ながらルートを考える。
これが難しい。
女川から海岸沿いに北上するつもりだったのだが。
それが景色の良い、そして交通量の少ない道かなと思っていたのだが。
どうも、そうもいかない雰囲気。
なぜならば、女川から上の(北の)方は、鉄道が無い。また、バスの本数も大変に少ないようなのである。
とすると、夕方歩き終えた時、うちに帰ることができないことを意味する。
これは、2泊3日くらいで少しずつ歩くリーマン徒歩旅行者にとって、大変厳しい条件だ。
というわけで、どう考えても海岸沿いの道は無理。
やはり公共の交通機関のアクセスの良い道を探すしかない。
よくよく考えて、JR東北本線、あるいは国道4号沿いにすることにする。
これでまた完全な一筆書きの日本一周ではなくなるが、まあ別に良い。
自分の楽しみのためにやってるんだから。
翌日、東北本線の小牛田まで電車に乗り、そこから北上することにする。
『8月14日(木)、小牛田スタート』
小牛田駅前。
結構整備してある。
駅から一直線に伸びる、広い道路。
街路樹。
いいねえ。
しかし、人がいない。
全然いない。
中性子爆弾が落ちた後のゴーストタウンか?
ま、徒歩旅行者にとっては、その方がいいや。
人なんかいない方が歩きやすいから。
小雨。
傘をさすほどでもない。
『コスプレ?』
駅近くのコンビニへ。
見た目はなんとなくセブンイレブン風。
しかし、聞いたことの無い名前。
チューン店でもない、コンビニ風個人商店だろうか。
いや、ここがすごい。
なにがって、あのね、店員の服がコスプレだ。
なんだよ、この服って感じ。
すごいんだよ。
ピンクや水色のペラペラの布地で、しかもピカピカ光る素材なんだよ。
「うわー」と思った。
しかも、気の毒なことにレジのお姉さんは20代半ば。
大人の女性にはメチャクチャ無理がある。
お姉さんは笑顔だったけど、内心悲しんでいるのではと思った。
あの服、経営者の趣味なんだろうか。
しかし、店もまた人と同じく、様々である。
おにぎり(ジャンボ焼きたらこ、ジャンボ・シーチキンマヨ)買う。
駅前午前8時にスタートしたんだけどさ、午後4時ごろJR新田駅と言う所に着くまで、この間、コンビニ一軒もなかったよ。
まだ、日本にもこんな地域があるんだよなあ。
そう大してコンビニに用事があったわけではないけど、飲み物とか自販機より種類が多いじゃない。コンビニあったら飲み物買おうと思ったんだけど、無いんだよな。
そのかわり・・・
『草野球見ながら昼飯』
お盆で休みだからだと思うけど、グラウンドで野球やってる。
町内会対抗戦みたいな雰囲気。一応ユニフォーム着ていて、家族が応援に来ている。
でも、レベルは高くないな。
そこは新興住宅地風で、道路が新しくてとても広い。歩道も広くて、街路樹があって、ベンチがある。ベンチは木製に似せたコンクリート製だが。
そこに腰掛けて、野球を見ながらジャンボおにぎりを食べる。
天気も良く、非常にのんびりした気分。
「こういうのが旅の醍醐味だよな」などと考える。
学生時代、散歩の途中よく草野球を見物していたのを思い出した。
毎週日曜日見ているうちに、各チームの特徴なんて覚えてしまっていた。
「このチームはキャッチャーがいいんだよな。右投げ左打ちか、野球経験者なんだろうな」とか考えながら見ていた。まあ、暇だったんだな。
いつまで見ていても仕方ないので、出発。
しかし、徒歩旅行もずいぶん余裕が出てきた。
『道路わきで飼われる牛』
そのかわり、牛がいたです。
道路脇に、5頭の牛が。
すごいよなあ、道路のすぐそばで、ほぼ放し飼い状態。
柵はあるけど、とっても低い。
牛をこんなに間近で見るのは珍しいので、立ち止まってながめる。
4頭の大人の牛は、すぐ近くにいるこちらを気にする様子も無い。
というか、全然、まったく動かない。
牛って、動かないものなんだね。
初めて知った。
もう、5分くらい見ていても、全然動かないんだもの。
子牛が1頭いて、この子牛だけが、こちらに対して反応していた。
ちらとこちらを見ては、母牛に「ちょっとちょっと、変な人いるよ」みたいに話しかける感じ。
でも、母牛、反応無し。
さらに子牛、こちらを見ては目をそらす、を繰り返す。
子どもは牛であっても、好奇心旺盛であるね。
しかし、牛は動かない。
それにしても、道路の側で半放し飼いとはなあ。
しばらく行くと、犬を放し飼いしている家もあった。
犬が暢気そうに、家から家へとほっつき歩いている。
のどかと言うか、ド田舎と言うか。
『休憩』
瀬峰駅という所で休憩。
駅のでかい看板を見てたら、「養豚団地」というのがあった。
このあたり、酪農の町なんだね。
新田駅という所で、本日終了にしようかと思ったんだよ。
でもね。
まだ4時だったし、天気もいいからもう少し歩けるかな、と。
あと、この駅、なんかすごい寂しい雰囲気なのよ。
周囲、なんも無い。
アメリカの荒野の真ん中にある駅みたい。
小さい駅だしね。
で、次の駅まで行こうかな、と。
『暗くなる』
いやあ、歩くと、次の駅までが遠い。
途中で暗くなってきてしまって。
嫌な気分なんだよなあ。
薄暗い中を歩くのは。
バス路線でもないらしく、バス停も無い。
車の通りもほとんどない、田んぼの中の道。
したがって、タクシーが通るわけでもない。
街灯も無さそう。
懐中電灯なんて持ってないから、実際暗くなると大変困る。
だって、知らない場所だから、道がわからなくなる。
街灯も無い、人通りも無い田んぼの中で、道に迷うのはつらい。
真っ暗になる前に、少なくとも住宅街に着かないと、と思って結構あせった。
もう朝から歩きっぱなしで、脚は痛いし。
ここまでの徒歩旅行で一番つらかったです。
なんとかかんとか石越の町に入った時には、もう真っ暗。
町なかに入れば、夜でもなんとかなるからね。
いや、でも危なかった。
次からは、夕方になったら、そこで終了しようと考える。
暗くなってから石越の駅までが遠いんだよ、これが。
やっと着いた時は、ほっとしたし、ちょっと充実感もあった。
この徒歩旅行も、最初はつらいだけだったけど、なんかちょっと楽しみを感じるようになってたな。
『石越駅』
小さい駅。
駅のベンチで電車を待っていると、中年女性3人組がいた。
トイレに行くのに、「ティッシュ置いてある?」、「ティッシュ無い」、「JRだからティッシュ無いんだよね」とか騒いでいる。
しかし、それも旅情だな、などと考える。
普通に考えれば、寂しい駅なんだけど、なんかこちらはほっとした楽しい気分だった。
旅情というか。
電車に乗って帰る。
乗ってしばらくして、花火大会に遭遇。
乗客がみんな花火が見える方に移動して、電車の中が盛り上がる。
山形駅から電車に乗ったら、浴衣姿の人が大勢で驚く。
山形市でも花火大会だったんだな。
カップルで浴衣姿の人もいる。
おいらは、カップルで花火見物より徒歩旅行がおもしろいなと考える。
そういう人は少数派か?
ま、両方楽しめればそれに越したことはないのだろうけど。
わたしの場合、人が大勢集まる所は苦手。
ひとりで歩いているのがいいな。
まあ、人に勧めようとは思わんが。
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