第3回目
『松島出発』
もう、秋なのである。
無理して休みをとって、やってきたのである。
第1回目では、もうやめようと思ったのに、この辺ではやめようという気持ちは無くなってたかな。
朝6時に駅へ。
今回は最寄の駅の隣の駅。
なぜなら、この駅は駐車場が無料なのである。
なんだか駅の前に、人が大勢。
こんな早朝、なんだ?と思ったら、ゴミを拾うボランティアらしい。
中学生から大人まで。町内会かなにかか?
車が無料で置けるのはいいんだけど、駅構内冷房が無い。
蒸し暑い。
このような欠点があったのね。
松島海岸駅着。9:30am。
ここまで遠くなると、出発地点まで来るのが大変。
この先、どうなってしまうのだろうと考える。
北海道に行くなんて、失業でもしないと無理なんじゃないかと考える。
しかし、そのようなことを考えて解決することも、この試みの一環なのである。だからつまり、サラリーマンが日本一周なんかやろうとしたら、そのような難しい点があり、それをどう解決するかも徒歩旅行実行の一部ということだな。
そんなことをポジティブに考えつつ、駅前のトイレで着替え。
歩き始める前に、既に暑い。
でも天気いいから、気分良し。
観光地だから、歩道が広くて快適。
のんびり散歩気分で歩く。
楽しい。
第1回目の苦しい気分は、なくなってたな。
目的地は石巻なんだけど、どの道を通るのか考えた。
交通量の少なそうな国道45号を選ぶ。
海岸沿いの道は、潮のにおい。
車も少ない。
『スイカ売り。尾花沢のスイカ』
沿道でスイカ売ってる人がいた。
周囲に住宅がまったく無い、山の中の一本道で、いきなり。
トラックからスイカ下ろしてる所だった。
尾花沢スイカと書いてある。
山形県の尾花沢から宮城県の方に山を越えてやってきて、路上で売っているらしい。「朝5時に収穫したばかり」なんて、ダンボールに書いてある。
一個300円也。
夏休みの観光シーズンだけなんだろうけど、こんな商売もあるんだなあと思った。
山形側で売るより、宮城に来たほうが売れるのだろうか、と考える。
一瞬、一個買って食おうかなと思ったが、面倒でやめた。
ちょうど夫婦連れの車が一台止まって、スイカを買うところだった。良かったね、一個売れて。
短パンでデイパック背負った青年とすれ違う。
徒歩旅行者だと思う。
このような場合、あいさつでもした方がいいのかと思ったりしたが、まあお互いあいさつすることもなく、すれ違った。
彼はどこまで行くのだろうか。
そして、わたしを見て一体なんと思っただろうか。
彼は20代前半かなあ。
こっちは40歳だものなあ。歩いての旅行は変だよなあ。
『コーラはおいしい。徒歩旅行中限定だが』
途中、自動販売機のコーラ飲む。
普段甘い飲み物飲まないので、コーラも久しぶり。
炎天下を歩いているので、実にうまい。
自販機のそばのブロックに腰掛けて飲む。
しばらくして、近くに車(ホンダ・オデッセイ)停車。
30歳くらいの夫婦と小さな子どもが乗っている。子どものひとりは赤ん坊か?
休日を利用して、家族でドライブ。
楽しそう、幸せそう。
奥さんと幼稚園くらいの子どもが降りて来て、自販機の前で何を買うか悩んでいる。
「ああ、だろうな」と思う。
冷房の効いた車に乗ってたら、何飲んだらいいか悩むだろうな、と。
あんた、歩いてみなよ、迷い無くコーラ選ぶから、と考えてみたりする。
冷房の効いた車で移動するのは快適だが、コーラはおいしくないだろう。
奥さんは結局散々悩んだ結果、何か買っていった。
今の時代、飲み物も気分転換の一種だからなあ。
そこへ行くと、わたしは清涼飲料水を、極めて正しく飲んでいるのである。
今回の旅行で何度かコーラ飲んだけど、でもホントうまいんだよなあ。
このおいしさは、高校の時の部活以来だなと思った。
自分には家族がいない(いると言えばいるけど、老父母。会話をするのも正直しんどい)。
でも、家族でドライブより、ひとりで徒歩旅行の方が100倍、は言いすぎか、10倍くらい楽しい気がする。
どうしてそう感じるのか、自分でもよくわからない。
『工事現場で昼食』
気がついたら昼の12時。
観光シーズンとあって、コンビにはどこも満員の盛況。
そこで地元の小さなスーパーに入る。
こっちはガラガラで客がいない。
コンビニも小さなスーパーも、似たような品揃えだろうし、スーパーにも駐車場はあるのに、奇怪な話。
これじゃあ、みんなスーパーやめてコンビニ経営に走るよなあ。
サンドウィッチ200円と、カフェラテとジャスミン茶(どちらも500ミリリットル)買う。
この町は、ずーっと運河沿いに道が続いている。
盆地育ちの人間には物珍しい景色。
運河の突き当たりの工事現場で昼食。
工事は休みのようで、人がいなくて良い。
運河で釣りをしている人がいるので、それを見ながら食べる。
こんなのも、また良し。
卵サンドなんだけど、ペナペナ。
サンドウィッチも自分で作った方がうまいな。
旅先では難しいが。
広い川を渡る。もちろん橋を使ってだが。
ジェットスキーやってる。
同じとこグルグル回って、おもしろいのかな。
『航空ショー。珍体験』
橋を渡ると、上空を戦闘機が飛んでいた。
盛大な煙を吐きながら、グルグル回っていたので、なんかのショーかな、と思った。
またまた4機の戦闘機がやってきて、くっついたり離れたりなんてのをやっていた。
一瞬「戦争?」とも思ったんだけど、まあなんかのショーなんだろうと結論づけた。
しかし、どうしてまたこんな所で?とも思った。
交差点に警官が立っていたので、「ああやっぱり、航空ショーだ」と思った。
そしたら「航空ショー」という看板もあった。
それからしばらくの間、上を向いて歩きながらズーっと航空ショーを見れた。
後でわかるんだけど、矢本町という所に、航空自衛隊の基地があって、この航空ショー毎年やってるんだってさ。
まあ、快晴の空に戦闘機。楽しくないこともない。
偶然の見世物として、悪くない。
徒歩旅行のちょっとした楽しいアクシデント、とも言える。
実際、悪くはないのである。
しかし、しかしね。
あのね、いくらなんでも人多すぎだろと言いたい。
ものすごい数の見物客なのだよ。
基地から広い道路に出るまで、もう何キロも車が渋滞してるのであるよ。
警官は交差点ごとにいるし。
ああ、一カ所交差点で、警官が信号を操作する部分にスイッチが付いたコードをつないで、それで赤信号や青信号を操作しているのがおもしろかった。
車の渋滞、すごかったよ。
車が並んでる横を歩いていったんだけど、あれ何キロあったんだろ。
車が止まってそばを歩いていくわけで。
みんな、こいつ何者って感じて、こっち見てたよ。
渋滞で、車全然動かないんだもの。
もっと生産的なことやれよ、と思った。
自分がやっていることも全然生産的じゃないか。
けど、町内の人間でもない通りすがりが、余計なお世話だよな。
この日自宅に戻って、テレビのニュース見てたらこのショーのことをやっていて、やっぱりすごい人出だと言っていた。
矢本町で偶然見たものを、そこから数百キロも離れた自宅のテレビでまた見るのは、不思議な気分。
『石巻の人は気さくである』
でもって、本日の終点石巻に近づいて、そろそろ疲労。
つらくなってきたので、サイクリングロードみたいな裏道のベンチで休息。
川(運河?)沿いの自転車と人しか通れない道。木が生い茂っていて、ちょっと薄暗い。
人通りも全然無くて、ちょっと寂しい雰囲気かな。
と思っていたら、向こうから自転車に乗ったおじさんがやってきた。
いきなり大声で「こんにちわあ」と話しかけられた。
「うわ、なんだなんだ」と思ったら、その40代後半と思われるおじさんは自転車をこぎながら(これがまたすごい勢い)「×××(聞き取れない。地名らしい)に行ってきたんだ! 航空ショー! 航空ショーのアルバイトして、この帽子もらったんだ!」と叫んでいる。
そして、その帽子をうれしそうにさわり、またまたすごい勢いで駆け抜けていった。
その間、ずーっとニコニコしていて。
一体なんだったんだろうか。
頭の弱い人でもないようだったが。
単純に帽子もらってうれしかったのか。
しかし、40代の人だぜ。
帽子もらってうれしいか?
知り合いでもない人間に、なぜ話しかける。
「石巻の人って、気さくなんだなあ」と思った。
ま、全員ああいう人でもないんだろうけどさ。
石巻駅前到着。
「やっと着いたあ、やれやれ」の気分。
疲労。
駅前に、等身大のサイボーグ003像がある。
あんまりマンガの003に似てないぞ。
駅前のトイレで着替える。
電車で家に帰る。