15.なぜセックスで入れると痛いの?
性交痛は男性にもありますが、女性の専売特許といってもいいほど、とくに女性にはさまざまな状況でおこります。
原因別には、器質的なものと心理的なものがあります。痛む場所では大まかに、腟の入り口や外陰の痛みと、腟の奥のほう、すなわち骨盤内の痛みに分けて考えられます。
器質的な原因とは、炎症や腫瘍など病気があるので、そこを刺激すると痛いという場合で、治療はもとの病気を治すことにほかなりません。
腟入り口付近の病気としては、腟・外陰炎があります。若い人ではカビなどの感染、閉経後ではホルモン不足のため性器が萎縮しておこることが多いのです。初期では性交痛ですが、ひどくなれば尿や石けんの刺激でしみるように痛くなります。
骨盤内の病気では、子宮内膜症、骨盤内感染症が代表的です。後者は性交するまでもなく痛いことが多いのですが、慢性の場合は性交痛で気づくこともあります。
次に心理的な原因ですが、これは、心理的といってもほとんどは身体的な反応で痛むものです。
たとえば性交に対する不安、恐怖、嫌悪などがあると、性的興奮のしるしともいえる、腟潤滑液の分泌(濡れること)が少なくなる、またはなくなってしまいます。それで、性器の触れ合いが、こすれ合いのようになって、痛みをおこします。
もう1つ、腟入り口部の痛みは、腟の筋肉が無意識に強く収縮するためにおこります。ワギニスムスといいますが、強い場合には男性器の挿入ができなくなるものです。
これは性交痛への過度の恐怖や強い緊張でおこります。性交できるが痛みをともなう場合は、軽いワギニスムスと考えていいと思います。
はっきりした傷や炎症がないのにおこる性交痛は、濡れないことと腟の強い収縮との両方がおこっていることが多いでしょう。ご質問の方もおそらくそうだろうと思います。「また痛いのではないか」という不安があると、性的な反応が十分おこらず、身体的には拒絶反応のようになってしまうわけです。
濡れやすい場合でも、「挿入すると痛い」ということをくり返していると、挿入したとたん分泌がとまって乾いてしまうことがあります。そして、性交痛をくり返す結果、相手にもよりますが、つい性交の間隔が開いてしまいます。
対策としては、まず痛みをがまんしないことです。パートナーに状況をよく説明し、協力してもらう必要があります。挿入すると痛むのですから、挿入はゆっくり、ていねいに行い、ピストン運動も痛ければやめてもらいます。
痛くない体験をくり返せば性的反応も再びおこり、制限も少なくなっていくでしょう。はじめのうちは分泌の補充にゼリーを使ってもよいと思います。
もっとも、乱暴な動きをすれば当然痛いのです。セックスは2人が楽しむものですから、痛みはがまんせず、気持ちよさとともに互いに伝え合うことが大切です。
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