ひょうたん島から動物小ばなし(「森からのたより」連載)
(第1話)
 ウシを見に初めて牧場にいったA子ちゃん。草むらの中をのぞき込んで必死に何かを探しています。そして「お母さん、ウシさんいないよ。」絵本でしかウシを見たことがなくて、カエルぐらいの大きさだと思っていたのだそうです。
 先日読んだ本に、「ハクビシンがウサギを喰うので、ウサギが減った。」と書いてありました。さらに、ハクビシンの足跡はとても大きくて、オオカミを思わせるとのこと。これに出くわすと命が危ないので、山では鉄砲が離せない、とまで・・・・
 ちなみにひょうたん島で見るハクビシンは、ネコくらいの大きさで、木に登って柿やりんごを食べています。襲いかかってもきません。私は本より、自分の目の方を信じることにします。(1999.2)(写真はハクビシンの事故死体。こんな写真ですみません後で捕獲したこどもの写真と差し換えますので)

(第2話)
 ある日「子ギツネ」が死んでいるという話を聞いて駆けつけると、そこには立派な大人のオス。山でタヌキの頭骨を拾ったときも、見た人全てが「子ダヌキだね」と言いました。大きさからは十分成長したタヌキのもののようです。
 どうもタヌキやキツネの大きさを中型犬くらいに思っている人がほとんどのようですが、実際にはけっこう小さいのです。でも、ひょうたん島での真夜中の観察でライトの中に浮かぶ野生の姿は、凛として精悍で、確かにずいぶん大きくは見えます。(1999.5)


(第3話)
 さて今日の話題はタヌキのしっぽ。長さは15〜18cmくらいで、頭から尾の先までの長さのおよそ四分の一くらいです。色は体と同じ茶色で一部に黒い毛が混じります。中学生の観察会で「動物クイズを作ってみよう」となげかけたところ、「タヌキのしっぽは何色でしょう?」というのが随分ありました。動物の体の特徴として尾の形や色についての関心は大きいようです。そして彼らの模範解答(?)のいくつかは「黒の縞模様がある」でした。この間違いの原因を考えるヒントが幼稚園に通う息子の本棚にありました。幼稚園でもらってくる本にはタヌキの絵が年間12冊中に8回登場し、そのうちの3匹がしましま模様の尾をもっていました。以前アニメにも登場してペットとして人気が高く、最近は野生化が話題になっているアライグマとの混同ではないかと思います。姿は確かに似ていて同じ食肉目の動物ですが、タヌキはイヌ科、アライグマはアライグマ科の動物です。(1999.8)


(第4話)
 続けて観察しているキツネの穴(仔育て穴)は、今年の春から夏は結局空き家のままでした。ところが数週間前から、穴の近くでキツネらしき鳴き声が聞かれるようになり、「もしや?」と思いのぞいてみました。すると、穴のエントランスに中の土が掻き出され、そこに爪痕が4本のイヌ科の足跡がついていました。縦方向に長く、先がすっとすぼまった形は、タヌキとは明らかに違います。いつの間にかキツネがもどってきていたのです。拡張工事なのか、掃除なのか、なにやら始めたところのようです。これから厳しい冬をその穴で過ごすつもりなのでしょう。来春にはかわいらしい子ギツネとともにその姿を見せてほしいものです。(1999.11)


(第5話)

 馴染みの床屋さんで耳寄りな話を聞きました。常連のお客さんの畑に「ササグマ」の穴があって、その姿もよく見られるというのです。山形でササグマとよぶ動物はたぶん「ニホンアナグマ」のことで、置賜では「マミ」と言っているのをよく聞きます。床屋さんに紹介して頂いて早速見にいくと、あるはあるは畑のあちらこちらに穴があいています。イメージとしては巨大なモグラが出没した跡といった感じでしょうか。まさにアナグマ(穴熊)のネーミングはぴったり!それ以外は考えられないといった風です。でも崖にある穴の周りにはササがびっしりと繁茂していて、その中にひそんでいれば目のまわりの黒っぽい体色が葉の形や陰影と同化してササグマ(笹熊?)になるのでしょう。「マミ」は鉄砲打ちの方々が”美味い身”のことだとおっしゃっていました。タヌキは臭くて食えないが、マミはとてもうまいのだそうです。(2000.2)