胃内容物分析とは動物を解剖して胃の中をのぞくことで何を食べているかを知ろうとすることです。動物の生活を知る重要ポイントです。


 動物が何を食べているのかを知る一番良い方法は,採食行動を直接観察することだと思います。金華山ではシカやサルを観察して,彼等が移動するとそこに行って食痕をさがしたりしました。しかしキツネとタヌキは食肉目の動物で,かたや狩りによって食物を得,かたや人家にも出没する雑食性,しかも夜行性,とても食事の現場を直接観察できるものではありません。そこで,交通事故死したり狩猟によって捕えられたりした個体の胃を取り出し,その内容物を観察するのが現実的です。

 大舟のフィールドに近い川西町塩の沢地内でタヌキの交通事故死体がでたとの連絡を受けて,早速回収,大学に持ち込んで各部の計測をした後,胃を取り出しました。内容物は355.9g。内容はほとんどが人間の残し物(大根葉と糸コンにご飯)でした。それを大きめのシャーレに水を張り,突き崩しながら残飯以外のものを探しました。小さな甲虫が1匹,くの字がたの昆虫の足,羽,これらはどうもトンボの様で,羽の模様から少なくとも3匹分でした。獣の毛数本。それにカエルが2匹。1匹はほとんど未消化の状態で,それらはホルマリンを入れた小瓶に整理しました。

 トンボとカエルの種類を確かめたくて,翌日交通事故現場付近を歩いてみると,そこには川があり,溜め池があり,ナラ林があり,畑があるといういかにもタヌキの好きそうな環境でしたが,手にした捕虫網もむなしくトンボは探せませんでした。残飯の出どころもはっきりしませんが,道をはさんだ奥の家で新築してからというもの,旧宅のゴミ場にネコが集まって散らかすという情報を得て,そこにタヌキも集まっているのではないかと思いました。


 <糞分析>

 当然ながら胃は動物が死なないと手に入らないので,実際にそこに生活中の(観察中の)個体の食生活を知るには不適当です。そのため糞を集めて同様の分析を行うわけです。タヌキは「ためぐそ」を見つけると,定期的に新鮮な糞が手にはいるはずなのですが,前にも書いたようにまだ探せません。キツネらしい糞はいくつか冷凍してあるのですが,たのみのキツネ臭がするほど新鮮でないものが多く,ノイヌ(飼犬?)のものと区別がついていません。イヌのものにはノネズミの毛が含まれないそうなので,まずは分析に挑戦してみるか,と考えているところです。