想い出のアルバム


大好きな曲でこれを聴くと必ず私の頭の中には
あるシーンが思い浮かぶ。
そして何年経った今でも胸がきゅんきゅんしてくる。。



私がまだ学生だった頃の事。
私の短大では単位を取得するために、現場実習が必須だった。
保育園実習(2回)・約一ヶ月に及ぶ幼稚園実習・施設実習などなどであるが
この中でも施設実習はちょっとした感慨深い思いがある。

施設と単純に言ってもいろんな種類がある。私が選択したのは養護施設だった。
ここは乳児を除く保護者のない児童や放任・虐待を受けている児童、
父母の家出・離婚など環境上養護を必要とする児童などを収容する施設だった。

いろいろな事情で入所している子供達がいた。ケース研究で沢山の事例を見せてもらったが
我が目を疑うような事情で入所している
子供もたくさんいた。中学生ぐらいになると当時の私とは
それほど年齢も変わらなかったので
実習生は身近なお姉さん的存在で職員の方には言えない事も
気軽に話してくれることがあり実習生の役割はそれなりに大きいらしかった。


子供達は実習生慣れしていたのでわりとすぐに受け入れてくれる。
その子の性格にもよるのだが、だいたいは二日もすれば慣れて会話がはずむようになる。
小学生・中学生の男の子達とは夜の自由時間に部屋で遊んだり卓球をしたり楽しく過ごした。

いろんな年齢の子供達がいたが私の記憶の片隅からいつまでも離れない二人がいた。
MちゃんとKちゃんという女の子だった。

MちゃんもKちゃんもまだわずか3歳だった。。。

一番母親に甘えたい盛りの年齢に母親から、家庭から離れなければいけない環境。
それがどういうものかは言うまでもなく想像を絶する。。。
かわいそう・・そんなひとくくりの言葉では片付けられない。。
そういう感情や同情だけで接していてはプロにはなれない。

時には突き放す事もしなければならない。仕事として割り切らなければいけない部分が
たくさん出てきた。。。それが当時の若い私にはとても辛かった。。。


Kちゃんは年齢のわりにしっかりした自立した子だったがMちゃんは母親の愛情が
欠落していた
こともあって実習のお姉ちゃんが来ると極端に甘えたがる子になる。
べったりくっついて離れなくなる。でも・・当然なのだ。。甘えたい盛りなのだ。

私はできるならべったり甘えさせてあげたかった。
だけど所詮実習が終ったら
ここを離れるのだ。その後のことを考えたらそんな無責任なことはできない。

それもまた辛かった。悲しかった。。。こんな小さい手が求めているのに
時には手を離さなければいけない・・
でも現実だった・・・
許される範囲で一生懸命彼女達と触れ合った。

実習は10日間の泊まり込みだったのでまさに寝食を共にする間柄であり
短期間でもすっかり家族の雰囲気になる。Mちゃん・Kちゃんとは一緒に
お風呂にも入った。身体を洗ってあげたり髪の毛を洗ってあげたり
お風呂でのひとときは、それはそれは楽しいものだった。
あの子達の無邪気な笑顔が断片的に浮かんでは消え
浮かんでは消え。。だけど今でも思い出す事が出来る。

実習が終るのは悲しかった。小学生ぐらいの子供達は、実習生は期間が終わると
帰ってしまうことを知っている。だから、「いつ帰るの?いつまでいるの?」って
聞いてくるようになる。答えるのもなんだか辛かった。

そしてついにお別れの時はやって来た。小学生・中学生の子供達とは
学校に行く前に朝お別れを言った。似顔絵を書いてくれる子・お手紙を
書いてくれる子。みんなやさしいいい子たちだった。

最後は施設に残っている二人のこどもたち。。。

思わずMちゃんとKちゃんをぎゅう〜〜っと抱きしめた。
連れて帰りたかった。涙が止まらなかった。。彼女達の幸せを祈って施設を後にした。。

施設にいる間、一番接触の多かったこの二人とNHKの「おかあさんといっしょ」
をいつも見ていた。その後の「みんなのうた」で、ずっと流れていたのが
「思い出のアルバム」だった。。。

今でもこの曲を聴くと、MちゃんとKちゃんのやわらかい手の感触や、
お風呂での嬉しそうな笑顔や抱きしめた時のなんともいえないぬくもりを思い出す。

そして一生忘れられない私の心の中の「思い出のアルバム」になった。